ホテル客室清掃のお話。

ホテル客室清掃についての色々な話を、現場作業から現場責任者、担当者まで経験してきた人が語るっていうブログです。

お客様は神様ではありません。人間なのです。

最近はほんとに数ヶ月前に比べて信じられないくらい責任者業務が楽になった。あの頃は、マジでこのままいくと死ぬかもしれない予感もしたものだが、慣れというのは恐ろしいものだ。以前なら、夜遅くまで残ってやっていた仕事が、今ではほとんど契約仕様の時間くらいには終わってしまうので、あんまり早く帰るのもフロントに悪い気がして、ネットでも見ながらだらだら居残ることが多くなった。

 

フロントさんはその名のとおり、ホテルの最前線で決して裏方仕事ではないのだけど、我々が帰っていなくなると、しばしば発生する清掃的な仕事もやらなければならない。例えばお客さんが「部屋にあったはずのものがありませーん」とでも言おうものなら大量のリネン類の巻き込みチェックをフロントでやらなければならなくなる。もちろん、別に私が帰ってしまって、フロントでやってもらえばいいのだけど、そういうのがどうも忍びない。巻き込んでしまったのは清掃だろうし、それが例えお客さんの勘違いで巻き込んでなかったとしても、なんかこう、責任を感じる部分がどうしても残るのだ。ほんと、巻き込み調べは大変だからね。

 

さて、宿泊約定、つまりホテルに泊まることだって、宿泊契約ということになるらしく、その約定には「お部屋で何がなくなったってホテルは責任取りません」とどこのホテル・旅館だってきっちり書いてある。貴重品を預って欲しいならばフロントにしっかり明示的に預ってもらわなければならないし、中には自分で何か私物を壊しておいてホテルに金銭要求するような悪質なお客さんだって想定できるわけで、そこまでは責任取れませんとしっかり契約として書いておかざるを得ないわけだ。

 

とは言え、サービス品質として、お客様のものが部屋でなくなったーみたいな申告には誠実に対応せざるを得ない部分は当然ある。というわけで、先日、だらだら居残っていると「巻き込みを探すので手伝ってくれ」という指令がフロントから下った。ところが・・・・

 

前に書いたけども、当ホテルではある程度は回収リネン類は階別に分けてある。だから基本、階別に分けてある部分についてはそこだけだけ探し、後は階別に分けていないものを探せばいい。だがしかし、その客は団体客の一人で、その団体は何フロアもまたいで泊まっていて、その人はどのフロアにも出入りしていたので、どこの部屋で失くしたのかわからないというのだ。だから、そのフロア分の回収リネン類を探さざるを得なくなったのである。

 

さすがに私はフロントに、それならクリーニング業者で回収してもらってから探してもらえば?と提案したんだけども、その団体は早朝にホテルを出立するので出来る限りホテルにいらっしゃる間に発見したい、と。こういう日に限って、フロントも人が少なかったりする。フロントは二人、こっちはもちろん私一人・・・・。

 

膨大なリネン類をひっくり返しては探し続けて二時間あまり。もう、三人ともへとへと。そろそろ後残りわずかというところで、フロントの一人に連絡が入った。「え?嘘でしょ?そもそも最初からなかった?何それ?」ってさ。お客さんの完全な勘違い。あるものを旅行に持ってきていたはず、と思い込んでいただけで、実は忘れて持ってきていなかったのだという。三人とも溜息つきながら、ぶちまけたリネン類を元に戻す作業でまた小一時間。全員「勘弁してくれ・・・」という意見で一致した。

 

ただ、さすがにそのお客さんも必死で探していた我々のことを気遣って、申し訳ないと思ったのであろう、千円くらいのお菓子を買ってきてくれた。いいお客さんだったなと・・・でも、それじゃ時給換算では全然足らんけど。

 

感覚としては、私はフロントではないので直接お客様のことは知らないが、最近はそうしたいい感じのお客さんは少なくなってきたような気がする。もちろん、全体としては感じのいいお客さんの方が多いのだけど、こないだも、そこまできつくいう必要はないだろうと思うほどの罵声をフロントの人に浴びせ続けているお客さんを見たし、そういう光景は珍しいとは思わなくなった。ちなみに、何故そのお客さんが怒っていたかというと、部屋にあった私物が破損していたからだ。だが、実はその部屋には清掃を含め誰も入った筈はないのでフロントさんはそう説明するのだけども、絶対誰かが入ったはずだといって聞かないのである。だいいち、そのお客さん自身が入るなとフロントに断っていた部屋だったのだ。フロントだって開錠記録を簡単に調べられるから、お客さん以外誰も入っていないことをしっかり把握しているわけでさ。

 

故・三波春夫の名言であるとされる「お客様は神様です」は一般に知られているような意味で言ったのではなく、あくまでも神聖な気持ちで歌うという自分の考えのみを述べたものだそうですね。

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で、そういう慇懃無礼というか高飛車過ぎるというお客様を見かけるたんびに「調子にのんな!」とどうしても思ってしまうのでございます。