ホテル客室清掃のお話。

ホテル客室清掃についての色々な話を、現場作業から現場責任者、担当者まで経験してきた人が語るっていうブログです。

品質の向上と不備の減少努力はちょっと違うという話。

不備の具体的なことを書こうかと思っていたのだけど、うちのスタッフに、不備はもちろん出さないよう努力はしておられるのですが、それよりもむしろ部屋の隅々まで完璧に仕上げたいという方がおられます。そこで、少し、品質を上げることと不備を減らしていくことは、重なる部分はあってもそれは少し方向の違う話である、というような話をしたいと思いました。

 

その人と色々話ししてきて最近分かってきたことがあります。仮のその人をAさんとします。Aさんはいつも、「歯ブラシの袋はピシっと」とか「デスクの引き出しの中に置くものの位置はどの部屋でもピシッと同じでなければならない」とか「ベッドの位置は基準の真ん中にピシっと収めるべきだ」などの話をよくします。電話の受話器のコードの捩れなどは絶対に有り得てはならないそうで、とにかく物凄く事細かにうるさい人です(笑)

 

私自身もAさん程ではありませんがそうした拘りはある方なのですけども、実際の話、そうした細かいことは、責任者の立場からすると内心は「どーでもいいこと」でもあります(Aさんは結構マジで言うのでAさんの前ではそんなことは口が裂けても言えませんが・・・)。ある程度、パット見綺麗だったらそれでいい、と思ってたりします。何故かといえば、そういうのは不備になることはまずないからです。私は怒られなければそれでいい・・・とまでは言わないけど、ともかくもまずは不備に悩ませ続けられているので、不備になるようなことの解決をしていきたい。

 

例えば、ベッドメイク。異常な程、ベッドが綺麗な人がいます。ビシっとたるみなくほんとに綺麗なベッドメイクをされるのですが、それが多少たるみがあったところで99%、いやもう100%お客さんからクレームなんて出やしません。Aさんもそれは分かっているのですが、性分的に我慢ならないところがあるらしく、どうしてもそうした高品質な方向を重視するのです。

 

でも、高品質を目指しても不備は減りません。どうしてかというと、どんなにベッドメイクが綺麗だったとしても不備はそのベッドのシーツの上の髪の毛一本で生ずるからなのです。それはビッシとベッドメイクするより遥かに大事なこと。これを読んで気を悪くされる客室清掃関係の人がいるかもしれないと断った上で書きますが、客室清掃はお客様のためにするものであって自己満足のためにするものではないのです。

 

もっとも、そういう高品質を目指すことは決して悪いことではないし、必要なことではあります。やはり、例えばそういうベッドがビシっとメイクされてたら印象は多少でも変わってくると思います。だから努力は怠ってはならないだろうし、細かく細かくうるさくうるさく拘るのは決して悪いことではないでしょう。でも、私が言いたいのはどんなに細かく拘ってビシっと部屋のクオリティを上げても、ただひとつの不備で清掃評価は最低にされてしまうのが現実なのです。例えば、そういう綺麗な部屋だったとしてもその部屋を作ったメイドさんがうっかり掃除機をかけ忘れたところに髪の毛の束が落ちていたら、それだけで最低にされてしまいます。

 

そういう時よくメイドさんはこういうことを言うことがあります。「人間だからミスするよ。他は出来てたからいいじゃない」みたいに。でもそれは違うんです。人間だからミスするなんて誰でもわかってるんです。ミスしたらダメだなんて言わないです。しかしながら、厳しい言い方ですが、私は仕事は自己満足で終わらせてはいけないと思うのです。なんだかフロント支配人の指導っぽくなってきましたが(笑)、そうじゃなくて宿泊客を満足させないとダメなのです。だから、そういう時は何故ミスしたのか、やっぱしちゃんと反省しないといけないのではないか、と私は思います。

 

とにかく最近は様々なサイトなどで、ホテルの評判が書かれて世界中にさらされてしまうし、人によってはそういう不備を写真付きで公開しやがります。私のホテルも何度もやられてます。ほんのちょっとしたことでもこれでもかと大げさに書かれて、泣きませんが泣きたくなりもしますよ、マジで。ほんとに毎日めっちゃくちゃ頑張ってるんです。

 

かつて、高度成長時代に、外国の車よりは性能で劣る日本車が世界を席巻したのは、日本車は壊れないからでした。そしてそこから日本車はどんどん高性能化されていき、とうとう外国車と性能面で全く劣らないものなりました。ホテルだってとにかく不備を少しでも減らすことの方が先だと思います。そこから高品質化を目指す、それでも別にいいのではないのでしょうか? だって、どんなに高品質でも不備の多いホテルに泊まりたいとは思わないでしょうから。