ホテル客室清掃のお話。

ホテル客室清掃についての色々な話を、現場作業から現場責任者、担当者まで経験してきた人が語るっていうブログです。

とんでもなく複雑な給与体系に目処が付いた。

連続で書いたり、ばったり更新が止まったりで申し訳ない。書くネタはないわけではないのだけど、どうも興味がブログ更新に向かなかったのでね。

 

ところで、ホテル客室清掃のメイドさんたちに支払う給与の形には、大きく分けて二通りある。時給制かそうでないか、だ。実際の話、労働法規上は時給制以外許されないと思うのだが、どうも日本という国は法律だけはきっちりしてあるのに、取り締まる側がゆるすぎて、ブラックを生み出す温床になっていると思うのだけど、そういうことはこの際どうでもいい。

 

で、うちの場合、形は時給で払っているが、実際には部屋数制だ。そのまま請負契約にして雇用保険とか会社が払わずに済むようにしようと社長が企んだが、それでさんざん揉めた他の会社の話をどっかで聞いたらしくてそれは諦め、形式上は時給制にはなっている。でも、計算の基本は部屋数である。ところが。

 

どういう経緯があったかは知らないが、できるだけ実際の労働量に応じてお金を払おうと前任の責任者は考えたらしく、部屋の種類や仕様などによって部屋数+αみたいな給与体系にしてしまった。たしかにそれなら多少は公平だ。楽な部屋としんどい部屋が同じ料金なら誰だって楽な方を選ぶし、しんどい部屋をやりたがらないので不満が出てしまう。ただでさえ基本は安いんだから、バカバカしくなって辞めてしまう人だって出てくる可能性もある。で、たしかにあまり不満は聞いたことがない。むしろしんどい部屋を多少お金がいいからと率先してやる人もいたりする。

 

でもね、これ、それを数える方は無茶苦茶大変なのだ。部屋数だけならまだしも、それ以外に全部上げるとざっと15項目もある。全部が全部頻繁に項目として上がってくるわけではなく、ほとんど大抵はその半分以下なのだけども、たまにそれ以外の項目も数として上がってくるので無視するわけにもいかない。その上、例えばそれらの数を先にメイドさんたちにきっちりこちらから指定できたらいいのだけど、シティホテルだから客室ごとのアウト時間とかもバラバラだから、そのタイミングで変わってしまう。他にも清掃不要だったりDDだったり、他様々な諸事情により最初にメイドさんごとに言い渡してた部屋数すらも結果は変わってしまうことも多い。

 

で、その結果の数をメイドさんたちに自主申告してもらえるんだったらまだ話は簡単だ。そのままそれを信じて積算すればいいのだから。だがそういうわけにはいかない。メイドさんたち全員がきちっと正確に15項目もある歩合項目を正確に記録できるはずはないのだ。正確に記録してあるのは、各フロアで使用する「清掃指示及び結果記録表」と呼ばれるものだ。ここに指示内容やその日の仕様、誰がどの部屋に入ったかは正確に記録される。だからこれを使うしかない。つまり、これを使って後で個人別に数えてやらねばならないのである。これが無茶苦茶大変なんだよーーーー!!!

 

前任の責任者は、神業的な集中力でこれをやっていた・・・おっそろしい時間をかけて、だ。・・・いや、実際ちゃんと出来たはずはない。どんなに集中力があったって絶対間違える。私は引き継いだ時に、前任者の取りまとめとその結果記録表を何人か実際に付きあわせて唖然とした。一人として正確に合ってなかったのだ。たとえば、一ヶ月のうち半数以上の日で間違ってることすらあった。そう言えば、個人別の月間記録表だって完成してしまえば簡単にプリントアウトしてそのメイドさんに渡せたはずなのに「手間がかかるので」などと言って数人にしか渡してはいなかったし、その月間記録表も項目毎に単価が同じになってるところが合算してあり、つまりごっちゃになっているので非常にチェックがしにくい。その上さらに、おそらく後で問い合わせられたら困るからであろうが、フロアごとのその結果記録表は給与明細表を渡してから半月も経てばシュレッダーされていた。自分でわかってたんだ、正確には集計できないって。

 

さて引き継いだ、つかまともに業務を引き継いでもらえたわけでもない私は、とにかくこれには参った。だから、しばらく放っておいたんだが、締め日は待ってくれない。他には誰にも出来ない。いつまでも途方に暮れてるわけにもいかないから、2回位前任者のやり方を踏襲しようとしたんだけど、とてもじゃないけど責任者業務しながらでは到底完遂できそうにないことは明らかだった。ったく誰だこんな給与体系にしようと考えたバカは・・・と愚痴ってても仕方ないので、とにかく、どうにかしてパソコンに落として、あとはエクセルががーっとやっちゃえばなんとかなるんとちゃう?と閃いて、とにかく最初が肝心と、可能な限り入力だけはさっさと出来るエクセル表をこしらえたんだ。結果記録表を出来る限り簡単な方法で読み取れるように、後でなんとか出来るようにと。これが大正解だった。

 

普通は、欲しい結果に合わせて作るもんだ。エクセル表なんかは特にそうだ。欲しい結果表を作ってそこまで持って行くにはどうするかを考えて、参照関係なんかを考え、それに合う入力表を作る。私はその逆をやったのである。結果はどうにかなる筈だから、まずは入力が先だ、と。その「結果はどうにかなる筈」という自信の根拠は、実は以前の会社で私は社内プログラマーだったのである。しかもエクセルの中にあるVisualBasicばっかやってたのだ。もっとも、プログラム作成は結構手間がかかる。普通ならエクセルがやってくれるようなことを自分で考えないといけない、みたいなところがある。だから最初の取りまとめの時は一切プログラムを書かず、普通にエクセル使ったことのある人なら誰でもやる参照を使うとか、標準関数を使うとか、コピペとかを繰り返すとかでやってたんだよね。

 

しかしこれには最悪の落とし穴があった。引き継いで最初の給与締め日の時はなんとかなったけども、それでもかなり苦労した。参照とか標準関数が何百個もあるエクセルファイルで、しかもそのシートが一ヶ月分もあるととてつもなくエクセルファイルが巨大に膨れ上がってしまうのである。ちょっとセルの内容を書き換えようものなら、自動再計算を止めていないと、頻繁に再計算が発生し、数分は止まってしまう。たったひとつのセルを書き換えるだけで、だ。それだけならまだしも、酷い時にはエクセルがクラッシュしてしまう。もっと酷いと、そのファイル自体が開けない。とてもじゃないが毎月こんな作業はできない。

 

日々の入力作業こそ前任者の時よりは数倍楽になったものの、流石にこれには参ってしまい、「何とかなる」の自信の根拠だったVisualBasicでのシステム作成に切り替える判断をせざるを得なくなった。・・・つか、あのね、ホテル客室清掃業務で現場責任者がプログラム書くなんて聞いたことがないし、日本全国探したってそんな人はいないと思うわけだが(笑)。まーいい、とにかくそうしないとやってらんないから背に腹は代えられぬ。サービス残業してやりゃぁ済む話だ。いいもん作れば自分が楽になるんだから、やってやろうじゃねぇかと。

 

結果、毎月のようにプログラムを弄くり倒しながら、現在はほぼ想定した以上のシステムがほぼ出来上がっている。こないだプログラムのソースを印刷して自分でビックリしたがA4百枚以上になっててワロタwww

 

いや、やっぱしね、間違ってたらアカンと思うんですよ。メイドさんだってお金のために働いてるんだから、きっちり支払ってやらにゃアカンでしょ。給与体系決めたのは会社側なんだから、そのとおり支払って当然でしょ。会社の人には「現場業務の改善のために作った」とか私は言ってますが、実はメイドさんのためなんです。だから、以前とは違い個人別結果表を全員に配布してますし、やっぱりそうは言っても人のすることだから間違えて入力することもあるから、個々人から訂正依頼が来ればきっちり翌月回しで訂正できるようにもしてます。その為に結果記録表は半年分保存出来るように変えました。みんな一生懸命働いてるんだからさ、当然だろう、と。

 

ほんとしかし、うちの会社はバカだと思う。私が実際にやるまで、誰ひとりとして給与体系にそんな問題があると気づく人はいなかったんだから。単純に考えたらわかったはず。だって例えば、メイドさんが20人いたら部屋数だけだったら一日20人分集計するだけで済むけどそれがたったの5項目になっただけで、☓5倍で100人分集計しなきゃならんことになるんだよ。アホ馬鹿死ね、と言いたい(笑)

 

てなわけで、最近になってようやくプログラムで新しく作りなおす箇所もなくなってきてほぼ問題がない感じになりまして、万々歳ってことで。