ホテル客室清掃責任者というお仕事

とあるホテルに客室清掃責任者として常駐しています。毎日クソみたいに忙しいです。お暇を誰か下さい。

手抜きテキトー清掃の奨め

ホテル客室清掃は厳しい。特に私の勤めるシティホテルは競争激化の流れもあり、とにかく厳しい。不備は相変わらずなくならないが、それでも諦めてはいけない。油断大敵だし、膨大なチェックリスト(真面目に作ったら項目だけで1部屋100項目を超えてしまったので完成させるの諦めたw)の全て、漏らさず不備のないよう努力しなければならない。

 

おそらく大抵のホテル客室清掃現場責任者は、毎朝、前日宿泊客から出て来る苦情・クレームに怯えながらの出勤をしている。ビクビクしては、不備がないとホッと溜息をつき、不備があるとガクッと項垂れて溜息をつく。溜息を一回つく毎に何日か寿命が縮まる、というのがもし本当なら私はもうとっくに死んでいるのかもしれない(笑)

 

だから、客室清掃作業をするメイドさんたちも大変なんだけども、実際のところ毎日全部屋100%完璧に清掃する事は不可能である。どんなに頑張ったって、結果として100%完璧はあり得ても、それは運に恵まれたからであって、人は人である以上、ミスをしない人は存在しない。あるいは部屋の状態だって様々、しばしば考えられないような汚れだとかそんな状態にも遭遇する。例えばテーブルの下面にガムが付着してて、何日か後に泊まったお客さんがそこに手を触れてしまい大クレームになった事がある。あんなの普通、経験がなきゃ分かるわけがない。

 

そもそも時間的制約がある。「今日は5部屋でお願いねー」と言われたらその日は5部屋やらないといけない。その時間的制約の中で100%清掃なんて出来るわけがない。私は何年か前、ほんとに100%清掃やろうとして1室3時間くらいかけて頑張ったが、最後には精も根も尽き果てそれが不可能であることを悟った。よく考えて欲しい、たかがベッドをメイクする事ですらも、シーツに刺繍された糸一本のほんの僅かなほころびですらもお客様はクレームに出来てしまうのである。いや、あのね、マジでそういう異次元の世界に住むお客さんはいらっしゃるんですよ。そういう話を前回書いたわけですけどね。

 

だからっつって、あからさまに手抜き清掃していいかと言う事では当然なくて、それなりに出来る限り100%に近づける努力はもちろん必要です。ですが、今回書きたいのはそういうきれいごとっつーか、ではなくて、そんなに厳しい厳しいホテル客室清掃だって、手抜きしてテキトーに出来るところは別にしたって構わない、ということです。むしろ、手抜きテキトー清掃でなんとかなるのなら全然やった方がいいと思います。

 

例えばね、一万人に一人しかクレーム出さないようなところを完全にしようとか、私はそういうのってあまり必要だとは思わないです。前回書いたようなほんとに細かいところにまで注意を払うとかね。或いは、拭き掃除に手間を掛けすぎとか、掃除機に時間を掛けすぎとか、丁寧にするのは必要だけど、時間を掛けすぎて他のところへの注意が出来てないのであれば本末転倒です。実はこういうのって初心者の人に多くて、初心者の場合は一つ一つ時間掛けてやってもらって、どっか他が抜けててもそれは初心者だから仕方ないっつー感じで思ってたんですけど、意外にも熟練した人にも時々見かけるんです。

 

うちに、異常なくらいベッドを綺麗に仕上げるメイドさんが一人いるんですけど、この人、しょっちゅう抜けがあるんです。ベッドだけを取ればこの人以上に綺麗にベッドメイクするのは無理、というレベルです。だから、ぱっと見、すっごい熟練さんに思えるんですが、実は違う。あまりにベッドに執着しすぎてて、正直、「いやベッドはもうちょっと雑でもいいので他にも気をつけて下さい」とか最早指導できません。どう考えたってあんなに綺麗にしても自己満足以上には意味はないと思うんですが・・・・。

 

そうじゃなくて、一つ一つの事をある程度丁寧にしとけば、完璧じゃなくたって全然良い。ほんとに隅の隅の埃なんか取らなくたって構わん。そーゆーところは、テキトーに手を抜け、そのほうが全然必要とされる仕事だと、私は思うんです。それが私の言うお奨め手抜きテキトー清掃なのです。で、色々とメリットがあって、そういう優秀な手抜き清掃の出来る人は、他の事も色々と気を配れるんですね。常設家具のちょっとしたキズに気が付くとか、エアコンの調子がおかしいとか、そういうところに気がつく余裕が出来るのだと思います。

 

或いはもっと、向上心のある人は、自分なりにテーマを持って仕事する人もいます。例えば今日は今まであまりやってなかった壁の埃を丁寧に取っておこうか、とか、デスクの引き出しの奥まで拭いておこうか、とかそういう風に自分なりに気がついてなかったようなところに注意するように他人に言われなくても自分自身でやろうとする。なかなかそんな人はいませんが、何人かはそんなメイドさんもいます。そういう人には責任者の私が逆に教わったりします。しかし、私の言うような手抜きテキトー清掃がなかなか出来ない人はほんとに上達しないですね。10年いても10年前とレベル一緒、みたいな。で、逆の意味でやって欲しくないような手抜きテキトー清掃をする。

 

でまさに今日、その人を結構厳しく注意したんですけどね(笑)。何をしたかというと、呆れた事に見た目分からないからと、掃除機をサボりやがった。なのでコロコロで髪の毛がいっぱい残ってる事を突きつけて、反省を即した次第。

 

何十人もメイドさんがいるので、そういう人がいても仕方ないんですけどね。