ホテル客室清掃のお話。

ホテル客室清掃についての色々な話を、現場作業から現場責任者、担当者まで経験してきた人が語るっていうブログです。

何度も言うけど基本はお金だよ、と言う話。

ある日、あるサイトの口コミで「客室が埃が溜まっている箇所が残っていてきちんと清掃されてないとしか思えませんでした」と書かれた。

 

しかし、客室内の埃(の堆積)を跡形もなく全て除去するだなんて無理だ。何故か。

 

理由は簡単だ。そこまで可能な料金単価設定になってないからだ。以前にこういう話をしている。

 

hotelsekininsya.hatenablog.com

 

ここで、大切なのは客室清掃時間だと言っている。時給であれ違法かもしれない請負歩合制であれ、おそらく大抵は「一室単価」という考え方で料金設定がなされている。かかる経費の最大の部分はメイド人件費だから、結局は、客室清掃時間が最も大きく清掃品質に影響を及ぼす。

 

実際にメイドを何室も頑張ってやった上での結論だ。メイドさんたちの清掃時間も調べ上げている。結局は、やたら綺麗な人はそれだけ時間をかけて清掃していて、早い人は杜撰な清掃しか出来てないのである。で、私が必死こいて考え抜いてほぼ手抜きゼロの状態で清掃しても、設定した客室清掃時間をどうしてもクリア出来ない。その上、それでも後で自分自身でチェックしてみると拭き残しとかあったりするわけだ。

 

絶対無理、出来っこない。

 

だいいち、責任者故に分かっていることなのだが、実際のところ、まだそれでも清掃作業は十分には程遠い。他にもまだやって欲しいことはある。カーペットのシミ取り作業もやって欲しいし、カーペットの部屋の隅を掃除機ノズルを付け替えて丁寧に除塵作業もやって欲しい。家具の引き出しは一旦抜いて丁寧に拭き作業して欲しいし、乾拭きだけで済ませている箇所もできるだけ水拭き&乾拭きにして欲しい。壁面のホコリ取りもやって欲しいし・・・・と実は挙げたらきりがないくらい他にも綺麗にして欲しいと思うところがある。でもそんなレベルどころの騒ぎではないのだ。そこまでやってたら最低賃金を遥かに下回る給与しか払えないだろう。

 

そこをどうにかして、一部を週間メニュー化したりして工夫はしてきたものの、物理的に不可能なものはどうやったって無理である。

 

・・・・というようなことを、支配人に理解してもらうのに一年かかったという話。いや、二年かな。最初の頃、支配人も「あなたの会社が請け負ってるんだから、責任を持って問題のないように清掃する必要がある」という考え方がこびりついていて、お客さんのクレームなどあってはならないという態度で我々に接してきた。だが、単価設定上そんなの絶対無理なのだ。

 

で、私はあまり神経質に、いちいち報告されてくる不備に対応することはせず、地道に減らしていける可能性のある不備を分類して、あくまでも全体の不備件数を減らすことを重要視した。すると、例えばカーペットの隅のホコリ取り作業が無理であっても、そのことでクレームが出てさえも、支配人はあまりうるさく言わなくなったのである。最初の頃は、「あなた私の言ってること聞いてます?」と支配人に非常に厳しい疑いの目を向けられてて結構きつかったですけどね。

 

大事なことは不備やクオリティ以外にもあって、可能な限り客室清掃は早く終わらせる必要もある。シティホテルではお客さんはアウトしたい時間にアウトするし、インしたい時間にインしてくるので、お客さんをお待たせしないことも大切なことなのだ。だからこそその意味でも清掃時間は重要だし、不必要なまでに清掃に時間をかけさせてはいけない。だからこそ、今の料金単価設定ならば、可能なクオリティはここまで、みたいなラインがあることをホテル側に理解してもらわないと、値上げにも繋がらないだろうと言う読みもあった。だって他のホテルと競い合ってるわけだからね。

 

こっちとしては、料金を上げてもらい、人手不足の解消だけでなく、それ以上に人を増やして一人当たりの担当部屋数を減らして一室あたりの清掃時間をもっと取りたい、というようなことも昨年の末ごろには支配人と話せるようにまでなった。なるほど、としっかり理解してもらえた。支配人が料金単価の決定権を持つわけではないけど、でもまずは支配人に理解してもらわないとね。

 

以上は、当たり前の話なのだけど多分当事者以外にはわかりづらい話でもあるのだろう。ともあれ、料金は上げてもらわなければならないが、私の給与はあげるつもりは微塵もないらしいので辞めるしか無いってわけである(笑)